北方謙三の三国志と水滸伝の魅力【ハードボイルド作家が書く歴史小説】

ハードボイルド作家として知られる北方謙三の伝説的な作品である三国志と水滸伝の魅力についてをご紹介します。

  • 原典に対する忠実さと創造性
  • 人物描写の深さと多様性
  • 歴史と現代の共通点と対比

という三つの点において、高い魅力を持っている作品となっています。

目次

はじめに

北方謙三は、日本の小説家であり、歴史小説や時代小説の分野で多くの作品を発表してきた。
その中でも、中国の古典文学である三国志と水滸伝を題材にした作品は、特に高い評価を受けている。
北方謙三の三国志と水滸伝の作品は、どのような魅力を持っているのだろうか。
本記事では、北方謙三の三国志と水滸伝の作品の特徴と魅力について、以下の三点に分けて考察する。

  • 三国志と水滸伝の原典に対する忠実さと創造性
  • 人物描写の深さと多様性
  • 歴史と現代の共通点と対比

三国志と水滸伝の原典に対する忠実さと創造性

北方謙三の三国志と水滸伝の作品は、原典に対する忠実さと創造性のバランスが絶妙である。
原典の筋書きや登場人物の設定は基本的に尊重しつつも、北方謙三独自の解釈や想像力を加えて、新たな魅力を引き出している。

例えば、三国志の作品では、諸葛亮の死後に起こった魏の司馬懿と呉の孫権の対立を描いた「司馬懿伝」や、曹操の死後に魏の皇帝となった曹丕とその弟の曹植の確執を描いた「曹植伝」など、原典ではあまり詳しく語られていない時代や人物にスポットを当てている。

これらの作品では、北方謙三は、歴史的な資料や考証に基づいて、司馬懿や曹植の人物像や思想を掘り下げて、彼らの内面や動機を鮮やかに描いている。
また、原典には登場しない架空の人物や事件も登場させて、物語にスパイスを加えている。
例えば、「曹植伝」では、曹植の妻として、曹操の側室の娘である曹芳という女性を登場させている。
曹芳は、曹植の才能や人柄に惹かれて結婚するが、曹丕との対立や曹操の死によって、曹植の立場が危うくなると、曹植を裏切って曹丕に寝返るという役割を果たす。
曹芳は、北方謙三が創作した架空の人物であるが、曹操の側室の娘という設定は、歴史的にもあり得ることであり、曹植の悲劇をより深く感じさせる効果を持っている。

水滸伝の作品では、原典の108人の梁山泊の好漢たちを、それぞれに個性的に描いている。
原典では、一部の主要な人物を除いて、多くの人物は、その出自や経歴、武功や技能などが簡単に紹介されるだけであるが、北方謙三の作品では、それぞれの人物に背景や動機、感情や思想などを与えて、彼らの人間性を浮き彫りにしている。

例えば、「水滸伝」の第一部である「梁山泊」では、梁山泊に集まった好漢たちの出会いや結束、戦闘や生活などを描いているが、その中で、梁山泊の首領である宋江や呼延灼、魯智深、林冲、武松などの主要な人物だけでなく、花荣や王英、鄧飛、孫立などの脇役的な人物にも、それぞれに魅力的なエピソードや台詞を与えている。
また、原典では、梁山泊の好漢たちは、皆、正義感や仁義に厚く、悪いことをした者には容赦しないというイメージが強調されているが、北方謙三の作品では、彼らの中にも、欲望や矛盾、葛藤や苦悩を抱えている者がいることを示している。
例えば、「梁山泊」の第十一章では、梁山泊の好漢たちが、山東の豪族である高俅の邸宅を襲撃する場面が描かれているが、その中で、高俅の妻や娘たちが、好漢たちに暴行されたり殺されたりする様子が、生々しく描写されている。
この場面は、原典にはない北方謙三の創作であるが、梁山泊の好漢たちが、皆、清廉潔白な英雄というわけではなく、時には、残酷や非道な行為をすることもあるという現実を示している。

人物描写の深さと多様性

北方謙三の三国志と水滸伝の作品は、人物描写の深さと多様性にも優れている。
北方謙三は、登場人物の心理や感情を細やかに描き出して、彼らの人間性や個性を際立たせており、登場人物の多様性も豊かであり、様々な立場や背景、思想や信念を持った人物が、物語に彩りを添えている。

例えば、三国志の作品では、魏の曹操や蜀の劉備、呉の孫権などの三国の君主や、諸葛亮や司馬懿などの軍師や政治家、関羽や張飛や趙雲などの武将など、三国志の登場人物は、それぞれに魅力的に描かれている。
北方謙三は、これらの人物の心理や感情を細やかに描き出して、彼らの人間性や個性を際立たせている。
例えば、「諸葛亮伝」では、諸葛亮の生涯を描いているが、その中で、諸葛亮の知恵や才能、忠義や節操などの美徳だけでなく、彼の苦悩や葛藤、孤独や寂しさなどの弱さや人間味も描かれている。
諸葛亮は、劉備の死後、蜀の丞相として、魏と呉に対抗するために、六度の北伐を行うが、その度に失敗や挫折に遭う。
諸葛亮は、自分の才能や理想に見合う人材や環境に恵まれなかったことに不満や悔恨を抱きながらも、劉備の遺志を継ぐために、最後まで奮闘する。
諸葛亮の死の直前には、彼は、自分の功績や名声に対する虚しさや無力感を吐露する。
北方謙三は、諸葛亮の内面を深く掘り下げて、彼の複雑で多面的な人格を鮮やかに描いている。

また、登場人物の多様性も豊かであり、様々な立場や背景、思想や信念を持った人物が、物語に彩りを添えている。
例えば、「曹操伝」では、曹操の敵対者や部下や家族など、曹操と関わった人物たちが、それぞれに個性的に描かれている。
曹操の敵対者としては、劉備や孫権などの三国の君主や、袁紹や呂布などの豪族や武将などが登場するが、これらの人物は、曹操とは異なる思想や信念、野望や目的を持って、曹操と対立する。
曹操の部下としては、荀彧や郭嘉などの軍師や政治家、夏侯惇や張遼などの武将、曹仁や曹洪などの親族などが登場するが、これらの人物は、曹操に忠誠を誓って、曹操の野望を支える。
曹操の家族としては、曹操の正室である卞氏や側室である丁氏や甄氏などの妻や妾、曹丕や曹植などの子供たちなどが登場するが、これらの人物は、曹操との愛憎や争いや和解などの複雑な関係を描く。
これらの人物たちは、曹操の人生や時代をより深く理解するために、欠かせない存在である。

歴史と現代の共通点と対比

北方謙三の三国志と水滸伝の作品は、歴史と現代の共通点と対比にも注目している。
北方謙三は、三国志や水滸伝の時代の歴史的な背景や社会的な状況を詳細に描き出して、現代の読者にも分かりやすく伝えている。
また、三国志や水滸伝の時代の人々の思想や行動や価値観を、現代の人々のそれと比較したり対比したりして、時代を超えた普遍的なテーマや問題を提示している。

例えば、三国志の作品では、魏・蜀・呉の三国が争う時代の歴史的な背景や社会的な状況を詳細に描き出している。
北方謙三は、三国の各国の政治や経済や文化や軍事などの特徴や違いを明確に示して、三国の対立や協力の理由や動機を説明している。
例えば、「魏志」では、魏の国力や制度や政策などを詳しく描いて、魏が三国の中で最も強大で安定した国であったことを示している。
魏は、曹操や曹丕や曹叡などの有能な君主や、荀彧や郭嘉や司馬懿などの優秀な軍師や政治家によって、中央集権的な政治体制や法治主義的な政策を確立し、農業や商業や工業などの経済発展や、文学や音楽や美術などの文化的な繁栄を実現した。
魏は、三国の中で最も先進的で近代的な国であったと言える。
一方、「蜀志」では、蜀の国力や制度や政策などを詳しく描いて、蜀が三国の中で最も弱小で困難な国であったことを示している。
蜀は、劉備や諸葛亮や姜維などの志高い君主や軍師によって、民主的な政治体制や仁義主義的な政策を採用し、魏に対抗するために、六度の北伐を行った。
しかし、蜀は、四川の山岳地帯に孤立しており、人口や資源や交通などの面で不利であった。蜀は、三国の中で最も理想的で古典的な国であったと言える。
また、「呉志」では、呉の国力や制度や政策などを詳しく描いて、呉が三国の中で最も多様で変化に富んだ国であったことを示している。
呉は、孫堅や孫策や孫権などの勇敢な君主や、周瑜や陸遜や呂蒙などの才能ある軍師や武将によって、江南の水郷地帯に勢力を築き上げ、海上の覇権を握った。
呉は、魏や蜀との同盟や戦争を繰り返しながら、自らの存亡をかけた。呉は、三国の中で最も現実的で多様的な国であったと言える。
これらの三国の特徴や違いを描くことで、北方謙三は、三国の時代の歴史的な背景や社会的な状況を現代の読者にも分かりやすく伝えている。

また、三国志や水滸伝の時代の人々の思想や行動や価値観を、現代の人々のそれと比較したり対比したりして、時代を超えた普遍的なテーマや問題を提示している。
例えば、「水滸伝」の第二部である「朝廷」では、梁山泊の好漢たちが、朝廷に招かれて、皇帝の命令に従って、辺境の反乱や外敵の侵攻などに対処する場面が描かれているが、その中で、梁山泊の好漢たちが、朝廷の腐敗や権力闘争や陰謀などに巻き込まれて、苦難や悲劇に遭遇する様子が、悲壮感をもって描かれている。
この場面では、梁山泊の好漢たちの思想や行動や価値観が、朝廷のそれと比較されている。梁山泊の好漢たちは、皆、仁義や忠誠や友情などの高い理想を持っており、悪いことをした者には容赦しないという正義感を持っている。
しかし、朝廷の人々は、皆、欲望や野心や利益などの低い欲求を持っており、権力や金や女などのためには、手段を選ばないという邪悪さを持っている。
梁山泊の好漢たちは、朝廷の人々とは相容れないということを痛感する。
この場面は、三国志や水滸伝の時代だけでなく、現代でも起こり得ることであり、北方謙三は、人間の善悪や正邪や理想と現実の対立や矛盾という、普遍的なテーマや問題を提示している。

おわりに

以上のように、北方謙三の三国志と水滸伝の作品は、三国志と水滸伝の原典に対する忠実さと創造性、人物描写の深さと多様性、歴史と現代の共通点と対比という三つの点において、高い魅力を持っている。
北方謙三は、三国志と水滸伝の時代の歴史や文化や人物を、現代の読者にも理解しやすく感動させるように、生き生きと描いている。北方謙三の三国志と水滸伝の作品は、中国の古典文学の名作を、日本の小説家の独自の視点と技巧で、再現した傑作であると言えるだろう。

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