筋トレを行う際、関節の動かす範囲、つまり「可動域(レンジ)」が重要な要素となります。
可動域には、関節を最大限に動かす「フルレンジ」と、部分的に動かす「パーシャルレンジ」があります。
筋肥大にはフルレンジが効果的と言われていますが、今回は、これらの可動域が筋トレの効果にどのように影響するのか、科学的エビデンスを基に解説します。
筋肥大と筋力増強の最適な可動域とは?
筋トレの効果には主に筋肉を大きくする筋肥大とアスリートのように筋力の能力を上げる筋力増強があります。
これまで多くの研究者が、可動域がこれらの効果にどのように影響するかを調査してきました。
筋肥大の効果について、ブラジルのフィデラル大学の研究では、アームカールをフルレンジで行うと、パーシャルレンジよりも高い筋肥大の効果が得られることが報告されています。同様に、コペンハーゲン大学の研究では、スクワットをフルレンジで行うと、パーシャルレンジよりも筋肉量が有意に増加することが示されています。
筋力増強の効果については、これまで意見が分かれていました。セントラルクイーンズランド大学の研究では、パーシャルスクワットがフルスクワットよりも筋力増強の効果が高いと報告されています。一方、リスボン大学の研究では、フルスクワットの方がパーシャルスクワットよりも筋力増強の効果が高いとされています。
メタアナリシスによる最新のエビデンス
2021年にムルシア大学のPallarésらが行ったメタアナリシスでは、16の研究報告を対象に、フルレンジとパーシャルレンジの筋肥大および筋力増強効果を解析しました。
その結果、筋肥大と筋力増強の両方において、フルレンジがパーシャルレンジよりも効果的であることが示されました。
フルレンジで筋力増強が促進される理由
これは、筋肉の「生体長」に近い部分的な可動域であるパーシャルレンジでは、大きな筋力が発揮できるためです。
しかし、フルレンジのトレーニングでは「スティッキング・ポイント(Sticking Point)」を何度も経験することによって神経活動が適応し、筋力増強の効果が高まるとされています。
スティッキング・ポイントとは、もっとも負荷がかかる位置や運動速度が低下する位置のことです。
高強度でのフルレンジのトレーニングには注意が必要
フルレンジのトレーニングは筋肉痛や筋損傷を引き起こすリスクが高くなります。
筋肥大の効果は週単位のトレーニング総負荷量に左右されるため、筋肉痛によりトレーニングが制限されると、その効果も低下します。
まとめ
筋トレの効果を最大化するためには、フルレンジのトレーニングがパーシャルレンジよりも有効であることが科学的に示されています。
しかし、フルレンジのトレーニングには筋肉痛や筋損傷のリスクが伴うため、適切な負荷と頻度で行うことが重要です。
目的に合わせてフルレンジとパーシャルレンジを使い分け、効果的なトレーニングを行いましょう。
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